『橘姓斑目家の歴史 古代・中世編』
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7はじめに系図が危険物扱いされるのには、学者・研究者の側の事情が隠れているような気がした。当たり前のこととして、学者・研究者もしょせん人間である。要するに、歴史学会という組織の中に生きる人間であるがゆえに、その組織の構造や体質のベクトルからは自由ではない。つまり、系図を重要視したり、安易に頼ったりすると、学界の中でばかにされかねない。よほど自分に自信がない限りは、組織人の常として、おのずと系図からは距離を置き、「危ないものには近づかない」というベクトルになじむことになる。この印象もぶつけてみたら、いずれも「その傾向はあるでしょうね」と、これまた苦笑いしていた。系図は虚偽を含むことが多くても、それは部分的にであり、全体として貴重な情報を含むこともまた事実である。従って向き合い方次第で重要な資料になりうるにもかかわらず、あつものに懲りたようになますを吹いているのが、歴史学の現状なのかもしれない。

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