『橘姓斑目家の歴史 古代・中世編』
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210野中氏はそうした極めてオーソドックスな手法によって、両系図の信憑性を吟味する本文批判(テキストクリティーク)を行った。『吉弥侯部氏系図』では、まず先頭の位置に置かれた「小金」について「どこかの貴種的な祖先(例えば天武天皇や舎人親王)に結びつけようとはしていない。中世以降の系図にありがちな作為性は、見られない」と指摘。続く各人について年代、世代、時代などの整合性を確認したあと、傍注に記された様々な情報を検討し、こう言及している。「中世になってから捏造されるような系図で、古代の擬ぎ任にん郡ぐん司じの制度を知っていてそれを人名の傍注に入れ込むなどということは、まず考えられない。しかも、どの人物の官職にも『擬』を入れるのではなく、時代的に不自然ではないところに狙って注入するなどということは、中世以降の系図改竄者・捏造者にはできないことだろう」「叙勲の記述が9世紀末の武信で終わっていることは、時代的に見てさほど無理がない

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